「AIで工数1/10」は本当か
よく聞く。「AIで工数が1/10になった」「もう人間いらない」。
嘘じゃないけど、本当でもない。
実感はこうだ。3人分の仕事を1人で回せるようになった。ただし、AIに任せられない部分が確実にある。その「任せられない部分」を無視して語る人が多すぎる。
一人会社を12年やっている人間の、リアルな数字を出す。
圧縮できたもの
コード — 70〜80%削減。
Claude Codeとの組み合わせで、実装工数は確実に縮まる。ボイラープレートやCRUDなら、体感で5倍速い。
ただし、アーキテクチャの判断は手放せない。AIは「作る」のは速いが「何を作るか」は決められない。
ドキュメント — 60〜70%削減。
提案書の初稿、レポートの骨子。AIに書かせて、味付けする。
ただし、クライアントの社内政治を考慮した表現の調整は、AIにはできない。「この役員にはこう言わないと通らない」は人間の仕事だ。
リサーチ — 50〜60%削減。
情報収集の初期スクリーニングは速い。ただし「この情報は信用できるか」「この文脈で使えるか」の判断は人間がやる。
圧縮できないもの
- クライアントとの対話。関係構築。空気を読むこと
- 曖昧な要件を「つまりこういうことですよね」と構造化すること
- 組織の力学を読んで、通る提案に仕立てること
要するに、「人間と人間の間」にある仕事はAIでは圧縮できない。
0.6人月を0.2人月で
実際の数字を出す。2025年の下半期、同等規模の案件を従来型チーム(3〜4名)でやったら0.6人月かかる仕事を、0.2人月で回した。
3分の1。悪くない数字だ。
ただし、これは「全領域の実務知識を持っている」という前提がある。デザインもコードもインフラも企画もわかるから、AIへの指示が具体的になる。指示が具体的だから、戻しが少ない。
AIの圧縮率は、使う人間の経験値に比例する。 「AI使えば誰でも3倍速い」という話が広まるのはわかるが、前提条件は省かれていることが多い。
増幅器であって、代替じゃない
AIは人間の代替じゃない。増幅器だ。
元の能力が高ければ、大きく増幅される。元がゼロなら、ゼロが増幅されるだけ。
3人分の仕事を1人でやっている。毎日定時で帰っている。だがそれは、AIのおかげというよりも、12年間ひとりで全領域をやってきた蓄積があるから成立している。
AIという倍率器は、かけ算だ。何にかけるかで、結果はまったく変わる。