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tech 約5分

他人のサイトを100個作って、自分のは0だった

12年間、クライアントのサイトは何十と作ってきた。自社サイトだけがずっとゼロ。靴屋の子が裸足で12年、AIと1日で靴を作った話。

#AI#Claude Code#Astro#web-development#solo-founder

靴屋の子が裸足で12年

クライアントのサイトは何十と作ってきた。

デザインを起こし、コードを書き、サーバーを立て、公開する。12年間、それで飯を食ってきた。名刺交換のたびに「Webサイトはありますか?」と聞かれ、毎回同じことを答える。

「すみません、自社サイトはまだないんです」。

Web制作を生業にしている人間が、自社サイトを持っていない。靴屋の子が裸足。業界の定番ジョークだが、12年も続くと笑えなくなってくる。

理由は単純だ。クライアントの仕事が先。自社サイトは「時間ができたら」。時間はできない。12年間ずっと。

じゃあAIと作ればいい

2026年、AIエージェントチームが動くようになった。

ふと気づいた。クライアントワークと同じ品質を、自分のために1日で出せるんじゃないか。

外注する選択肢もあった。だが、12年間クライアントの制作物に「ここ、もうちょっと」と言い続けてきた人間だ。他人に任せて黙っていられる自信がない。

実験も兼ねて、自分で作ることにした。

ブルータリストを選んだ理由は「AI都合」

デザインはブルータリストにした。装飾を削ぎ落とし、タイポグラフィとコントラストで勝負するスタイル。

おしゃれだから選んだわけじゃない。AIと一人で作るのに、最も相性がいいからだ。

  • 画像素材が不要。ストックフォトを探す時間がゼロになる
  • コンポーネントがシンプル。AIが生成するコードの精度が跳ね上がる
  • コピーの力がそのまま伝わる。装飾が邪魔をしない

デザインの選択肢としてブルータリストを選んだのではなく、制作体制の制約から逆算してブルータリストに辿り着いた。制約がデザインを決めた。

フォントは3つだけ。見出しにAnton、本文にIBM Plex Mono、日本語にNoto Sans JP。アクセントカラーはページ読み込みのたびにランダムで変わる仕掛けにした。5色からJavaScriptで選択し、ロゴも連動して切り替わる。

遊び心と「毎回違う表情を見せる」というブランド体験。ブルータリストは無愛想なスタイルだが、無愛想なサイトにしたかったわけじゃない。

技術選定は3秒で終わった

Astro + Tailwind CSS v4 + Cloudflare Pages。迷う余地がなかった。

Astroは静的サイト生成に特化している。コーポレートサイトにSPAは不要。HTMLを吐くだけでいい。MarkdownでContent Collectionsが使えるから、ブログ管理も完結する。

Tailwind CSS v4はCSS-firstに生まれ変わって、設定ファイルが消えた。@themeディレクティブでデザイントークンをCSS内に直接書ける。セットアップの速さが段違いだ。

Cloudflare Pagesはgit pushで自動デプロイ。CDNも無料。選ばない理由がなかった。

午前と午後で全部終わった

午前中にやったこと:

  1. サイトマップとページ構成をAIと決定
  2. デザインシステム(カラー、フォント、スペーシング)をCSSで定義
  3. Layout、Header、Footer、SEOコンポーネントを生成
  4. トップページを構築

午後にやったこと:

  1. 7つのサブページを一気に作成
  2. 日英切り替え(i18n)を実装
  3. ブログ機能を追加
  4. デプロイ、ドメイン設定

AIに任せたのはコーディングと構造化。やったのはコンセプト、コピー、ディレクション。

ポイントは、最初にデザインシステムを厳密に定義したこと。CSS変数にフォント、間隔、色のルールを書き込んでおけば、AIはそのルールに従ってコンポーネントを量産する。ルールが曖昧だと、ページごとにデザインがブレる。

12年間クライアントに言い続けてきたことだ。「最初にルールを決める」。

項目
総ページ数20(日英各10)
開発期間1日
エンジニア0人
デザイナー0人
ホスティング費月額0円
Lighthouse Performance95+

できなかったこと

万能ではない。正直に書く。

コピーライティングはAIに任せきれなかった。ANDOORのトーン「断言・短文・実体験ベース」を再現するには、人間が書いて見せる必要があった。AIは「それっぽい文章」は書ける。だが「この会社の声」は書けない。

画像はカバーできなかった。ロゴやOGP画像はFigmaで自作した。テキストベースのAIではどうにもならない領域。

レスポンシブの微調整は目視が必要だった。大枠はAIが作れるが、768px以下の細かい詰めは人間がやるしかなかった。

「1日で作れた」の裏には「12年分の判断力」がある。デザインシステムを定義できるのも、コンポーネント分割の粒度を決められるのも、制作経験があるからだ。

靴ができた

12年間、裸足だった靴屋の子が、ようやく靴を作った。1日で。

これは「AIがすごい」という話ではない。 10年以上Web制作をやってきた人間が、AIをツールとして正しく使った結果だ。経験がなければ、AIに何を指示すればいいかすらわからない。

逆に言えば、経験さえあれば、もうチームを組まなくても1日で本番レベルのサイトが作れる。

12年間の「後回し」は、半日で片付いた。残りの半日は、ブログの第1稿を書くことに使った。靴を作った日に、もう走り出していた。