道具が壊れていても、誰も怒らない。
今日も、Teamsの通知バッジが消えない。
アプリを開く。チャット、チャンネル、アクティビティ。すべて確認した。未読はゼロ。なのに、赤い数字はそこにある。「1」。消えない。
もう一度、全部クリックする。消えない。
5年間、放置されてきたバグ
調べてみた。Microsoftのコミュニティフォーラムに、同じ内容のスレッドがある。投稿日は2021年。5年前だ。
2026年現在、スレッドはまだ動いている。同じ症状の報告が続いている。Microsoftの公式回答はこうだ。「調査中の既知の問題です」
公式の対処法として案内されているのは、これだ。
- キャッシュフォルダを手動で削除してください
- サインアウトして、すべてのデバイスで再ログインしてください
- アンインストールして、再インストールしてください
これは解決策ではない。責任の転嫁だ。
なぜ、誰も怒らないのか
5年間、有料のエンタープライズツールに既知のバグが放置されている。
毎日何百万人もの人が、存在しない通知に時間と注意を奪われている。にもかかわらず、ほとんどの人は「仕方ない」と諦めている。
「Teamsってそういうもの」「うちの会社が使ってるから」「気にしないようにした」
慣れることを、適応と呼ぶのか。それとも、諦めと呼ぶべきか。
道具は、透明になるべきものだ
道具は、職人の意図を拡張するものだ。
筆は画家の手の延長として、キャンバスに色を乗せる。包丁は料理人の感覚を食材に伝える。道具が優れているとき、使い手はその存在を意識しない。道具は透明になり、作業だけが残る。
Teamsがやっていること
ところが今、Teamsの通知バッジは何をしているか。
赤い数字が視界に入るたびに、脳は「未読がある」と反応する。開く。何もない。また戻る。この小さな中断が、1日に何十回も起きる。
使い手の意図を拡張するどころか、使い手の注意を奪い続けている。
これは道具ではない。枷だ。
「他に選択肢がない」は本当か
「でも、Teamsしか選択肢がない」という声が聞こえる。
本当にそうか。
チームが「会社がTeamsを導入したから」と使い続けるとき、その選択に誰が関わったのか。なぜ選ばれたのか。他の選択肢はあったのか。誰かが検討したのか。
道具を選ぶ権限が自分にないとしても、道具を疑う目は持てる。
道具を疑うことが、最初の抵抗だ
「これは正常なのか」「これは仕方ないのか」「この摩擦は、甘受すべきものなのか」
そう問い続けることが、道具に使われないための、最初の抵抗だ。
壊れた通知バッジは、小さな話だ。
でも、壊れた道具を「そういうもの」と受け入れるとき、何かが少しずつすり減る。
道具を疑うことを忘れた職人は、いつのまにか道具に従うようになる。