クライアントに「すみません!!!!」と送った
先日、クライアントへのチャットで「すみません!!!!」と送った。
感嘆符4つ。ビジネスマナー講師が見たら心臓が止まる文字列だ。
でもこれは計算だった。「すみません。」だと冷たい。「すみません!」だと普通。「すみません!!」でやっと熱が伝わる。4つ打ってようやく「本気で焦ってます」が届く。
テキストの感嘆符は、通貨と同じでインフレする。
1年前の「!」と今日の「!」では購買力が違う。それを肌で理解している人間と、していない人間がいる。
オンラインの方が、人間がバレる
「やっぱり対面じゃないと伝わらないよね」。よく聞く。半分嘘だ。
対面には化粧がある。名刺、スーツ、握手、場の空気。実力がなくても「ちゃんとした人」に見える。雰囲気だけで60点取れるのが、対面の正体だ。
オンラインには、その化粧がない。Zoomの画面越しに伝わるのは声と言葉だけ。チャットに至っては言葉だけ。すっぴんだ。
先日、新しいクライアントとのキックオフをオンラインでやった。初対面。画面越し。30分で「この人は本気だ」とわかった。
本気のシグナルは2つしかない
「質問の質」と「内輪の文脈を渡してくれるか」。 この2つだけだ。
本気の人は質問してくる。事前に調べた上での質問。Google検索で出てくるレベルの話は来ない。「ここまで調べたんですが、この部分が——」と来る。準備に時間を使った人間の質問には、密度がある。
もう1つ。内輪のコンテキストをちらっと渡してくれる。「実はうちの社長が——」「現場では正直——」。社外に出しにくい情報を、まだ関係が浅い相手に渡す。それはリスクを取っているということだ。
「この人には賭けてもいい」の行動証明。
逆に、当たり障りのない質問しか来なかったら、本気じゃない。ゴルフで言えば素振りだけして帰る人だ。
テキストには化粧が効かない
SNSのプロフィールは盛れる。経歴書はもっと盛れる。LinkedInは盛り放題の楽園だ。
チャットは盛れない。
リアルタイムのテキストは、反射と語彙の掛け合わせだ。どんな言葉を選ぶか。どのテンポで返すか。「。」で終わるか「!」で終わるか。全部に人間が出る。準備できない。推敲する暇もない。日常の蓄積が、そのまま滲む。
「承知しました。」という壁
同じ「了解」でも、温度が全然違う。テキスト温度計をつけるとこうなる。
「承知しました。」——氷点下。感情ゼロ。返事はしたが、壁は閉じた。
「承知です!」——常温。最低限の体温がある。
「了解です〜!」——やや暖かい。仕事しやすそうだ。
「りょ!」——至近距離。信頼関係が成立している。
同じ意味の言葉を、どの温度で届けるか。 それがテキストコミュニケーションの全てだ。
「承知しました。」を毎日量産している人は、レンガ職人のように壁を積み上げていることに気づいていない。
この業界、素人が多い
正直に言う。テキストに感情を乗せられない人が、この業界には多すぎる。
Slack、Discord、メール。全部「です・ます」で均一。温度差ゼロ。喜怒哀楽ゼロ。天気予報で言えば全国一律15度の曇り。
「タスク完了しました。ご確認ください。」——報告としては100点。人間としては0点。
テキストに感情を乗せるのは、テクニックじゃない。 スキルアップセミナーで学ぶ類のものでもない。
友達にLINEを返すとき、どんな言葉を選んでいるか。恋人に謝るとき、どんなテンポで打つか。母親に「元気?」と送るとき、スタンプ1つ付けるか付けないか。
その日常の蓄積が、ビジネスチャットにそのまま出る。日常でキャラが出せない人間が、仕事で急に人間味を出せるわけがない。
テキストは、人が出る
12年フリーランスをやっていると、初回のチャットだけで相手の本気度がほぼわかる。質問の質。文面の温度。コンテキストの渡し方。全部テキストに出る。隠せない。
リモートが当たり前になった世界で、テキストは名刺であり、握手であり、第一印象だ。
「すみません!!!!」と臆さず打てるか。「ちょっとやらかしました」と正直に書けるか。たったそれだけのことで、信頼の入り口が変わる。
ちなみに例の「すみません!!!!」の件、相手からは「全然大丈夫ですよ〜!」と返ってきた。「〜!」付き。本気の人だ。