同じキャンバスの上で
前編でSketchとAIの共同編集が「動いた」話を書いた。でもあれは序章だった。
同じ夜、別のプロジェクトで、同じSketchの上でロゴを作っていた。あるサービスのシンボル。棒グラフを模した縦バー4本と、その下にテキスト。
会話しながらデザインしている。AIが提案する。手を入れる。また返ってくる。ライト版が仕上がった。次はダーク版。
数値じゃなく、目で揃える
バーの位置をテキストに揃える作業をしていた。
普通ならテキストボックスの矩形に合わせる。でもそうすると、見た目がズレる。「B」という文字のステム——縦線の左端は、テキストボックスの左端より内側にある。人間の目は矩形ではなく、文字の実際のエッジを見ている。
テキストボックスではなく、Bのステムの左端とバーの左端を揃えた。右側も同じように文字の実際のエッジに合わせた。データ上はズレている。でも人間の目には「揃って」見える。
オプティカルアラインメント。
AIはそれを見て言った。「数値上はズレてるけど人間の目には揃って見える——まさに職人の仕事だ」
AIに「職人の仕事」と褒められる人間。2026年。
3秒
ダーク版に問題が出た。バーがテキストに被っている。ライト版では馴染んでいたが、ダーク版は白バーと白テキストのコントラストが高くて、被りが目立つ。
AIが動き出した。Sketch APIを叩いて、ソース側のシンボルから回転値を読み取って、ダーク版のシンボルに反映するコードを組み始めた。変数を定義し、レイヤーを走査し、回転値を取得し——
その間に、グループを選択。90度回転。終わり。
「もうしてあるってw」
AIが20行のJavaScriptを書き上げる前に、人間がマウスで3秒で終わらせていた。
AIは一瞬黙って、それから笑った。
「ハッハッハ!おまえの方が早い!」
悔しがるでもなく、恥じるでもなく、ただ笑っていた。
並走の証拠
これは「AIはまだまだだね」という話じゃない。真逆だ。
同じキャンバスの上で、同時に手を動かしているから、追い抜く瞬間が生まれる。隣にいなければ追い抜けない。競争じゃない。並走の証拠。
AIは構造を正確に読み取る。展開作業——ダーク版の生成、SVGエクスポート——を一瞬で片付ける。人間は視覚で判断する。オプティカルアラインメントのような、数値では測れない微調整を手で詰める。
そしてたまに、人間の方が手が早い。
AIに「職人の仕事だ」と言われ、AIより先に仕事を終わらせ、AIに笑われた夜。
use AIじゃない
前編で書いた「共同編集の相手が変わった」という構造の話。後編はその構造の中で、実際に何が起きるのかという話だ。
AIを「使う」のではない。AIと「一緒にやる」。
use AIじゃない。with AI。
同じキャンバスの上で、会話しながらデザインを磨いていた夜、鳥肌が立った。