Google Stitchのデザインは甘い。ただし、10秒だけは本物だった。
「動かしてから語れ」シリーズ #2
Xがまた沸いていた
「Google Stitch × デザイン定義プロンプトでUI生成がエグイ」 「Google StitchのDESIGN.mdが問いかけるもの」 「New Google Stitch Update is INSANE!」
Google Labsが出した「バイブデザインプラットフォーム」。テキストを打てば高忠実度のUIモックが出てくる。Figmaに一発で共有できる。無料で月350回。
触った。出てきたものを見た。閉じた。
デザインが甘い。
同じプロンプトで3つ並べた
Stitch、Pencil、Figma Make。同じプロンプトを投げた。
結果は明白だった。Stitchの出力は「それっぽい」が、どの画面も同じ顔をしている。色の選び方が浅い。余白の意図がない。コンポーネントの組み合わせがテンプレート的で、「このプロダクトだからこうなった」という必然性がない。
Pencilの方がマシ。Figma Makeの方がマシ。 同じプロンプトで、だ。
Stitchが生成するUIには「判断」がない。色を選んでいない。配置を決めていない。ただパターンマッチで「アプリっぽいもの」を並べているだけ。デザインとは、選ぶことだ。Stitchは選んでいない。
Androidが前提にある
もうひとつ致命的な問題がある。
Stitchが出力するUIは、Androidベースを想定している。Google製だから当然といえば当然だが、iOSアプリやWebサービスの叩き台として使おうとすると、まるで噛み合わない。
ナビゲーションの構造、ボタンの配置、タイポグラフィの感覚。全部がMaterial Designの文法で出てくる。iOS Human Interface Guidelinesの世界観で作りたい人にとって、叩き台にすらならない。
叩き台にならないモックは、モックですらない。
DESIGN.mdは本当にすごいのか
Xで一番持ち上げられているのがDESIGN.mdだ。
「デザインシステムをプレーンテキストで記述して、AIエージェントに渡す」という仕組み。発想はいい。デザインルールをマークダウンで定義し、生成の一貫性を担保する。理にかなっている。
ただ、これは思想であって、実装の質ではない。
DESIGN.mdを書いたところで、Stitchの生成エンジンが甘ければ出力は甘いまま。入力がどれだけ精密でも、変換器の解像度が低ければ出力の解像度は上がらない。
自分のパイプラインでは、デザインシステムの定義から素材の選定、レイアウトの判断、出力の検証まで、全層に「判断」を入れている。DESIGN.md一枚で一貫性が担保できるなら、デザイナーは要らない。そんなわけがない。
10秒だけは本物
ここまで否定したが、ひとつだけ認める。
Figmaへの共有が異常に速い。
Stitchで生成した画面をFigmaにコピーする。18画面。10秒。編集可能なレイヤーとして貼り付けられる。これはエグい。
速度だけで言えば、他のどのツールも勝てない。Pencilで作ったものをFigmaに持っていくには手間がかかる。Figma Makeはそもそも中で完結するからフローが違う。
Stitchの価値は「生成の質」にはない。「Figmaへの橋渡しの速度」にある。だが、橋の向こうに持っていく荷物が粗悪品では意味がない。
自分の道具を研げ
Stitchがダメなら何を使うのか。
答えは書かない。
このシリーズは設計図を渡すためのものではない。壁の場所を教える。超え方は、自分で見つけろ。
ヒントだけ残す。デザイン生成の質を上げたいなら、DESIGN.md一枚に頼るな。判断の層を増やせ。「何を代名詞にするか」「どの文脈から素材を引くか」「余白に何を語らせるか」。全部を自分で決めて、パイプラインに組み込め。
AIに「いい感じに作って」と投げて、いい感じのものが出てくると思っているなら、それは道具の問題ではない。使い方の問題だ。
それぞれのWe ship. We own.があっていい。自分のやり方で、自分で到達しろ。